経済が衰退する原因は、「気持ち」!?
豊かな国ニッポンで私たちは生き続けることができるのか。どうして日本は衰退してしまったのか。前回の第1回に続き、第2回もドルーロにゃんが解説します。
がんばるにゃ
前回 【第1回】少子化で日本が衰退する2つの理由 では、少子化によりモノを買う人が減ったり、年金の支払いに圧迫されたりすることで、「お金が使われない」世の中になり、経済が衰退してしまうことを解説しました。
今回は、そもそも「モノを買う気持ちが薄れてしまっている」ことに注目します。
この日本人の気持ちの変化は、あの「失われた20年」によるものだったのです。。。
全4回に渡って、どうして日本が衰退して しまったのかを、ドルーロにゃんが勉強していきます。
シリーズ「どうして日本は衰退してしまったのか」はこちら
お金が回らないのは、「気持ち」の問題?
ガンガン出世してたくさん稼いで、ブランドものに囲まれて生活したいなんてバブリーな人は、今は少ないでしょう。
でもそんな人が世の中にたくさんいたら、モノはどんどん売れて、企業はもうかり、給料も増えて、お金の循環がよくなることでしょう。
バブリーだにゃ
ただ現実には、「都内に住んでるから車は 要らないなぁ」とか「お金がもったいない からお弁当を作って持っていこう」という 節約志向の人は多いはず。「老後が心配だから、浪費しないでしっかり貯金しよう」とか、「1円でも安いスーパーにいこう」とか。
現実には、お金をたくさん使いたくたって、手元にお金がなかったり、将来の不安だったりで使うことができないわけです。
こうした消費の心理状態を、「消費マインド」といいます。近年のこういった消費マインドは、節約志向とも言えるし、「モノを買う気持ちが薄れてしまっている」とも言えるでしょう。
消費マインドが低下していると、企業はもうからないし給料もあがらないし、と、「経済衰退」に陥ってしまうのです。
どうして日本人の消費マインドは低下してしまったのでしょうか。
日本人はお金をたくさん使ってきた
江戸時代の日本人
日本人は勤勉でよく働き、貯蓄もしっかりするマジメな民族だと言われます。だから節約志向なのも納得できます。
しかし江戸時代にさかのぼるとそうでもなさそうなのです。
当時の江戸(東京)で有名になった言葉に「宵越しの銭は持たず」というのがあります。これは、稼いだお金はその日のうちに使い切ってしまう、という江戸っ子の性格を表したもの。
全然マジメじゃなさそう
当時の江戸では木造の建物が密集し、一度火事が起こると次々と延焼して大火災になることも珍しくありませんでした。お金も燃えて灰になってしまっては意味がないので、「貯めずに使うもの」という考えになったのです。
高度成長期の日本人
時代は進んで戦後の高度成長期、日本人はマジメと言われましたが、よく消費をしていました。
三種の神器(テレビ、洗濯機、冷蔵庫)や新三種の神器(カラーテレビ、クーラー、車や)と言われた製品を手に入れることがステータスとされました。
上司は部下を飲み会に連れておごり、得意先を接待することも日常的に。
1990年頃のバブル期には、海外旅行者も増加し、クリスマスにはスイートルームで大学生がパーティーする、なんていう話もありました。
江戸時代でも現代でも、みんなバブリーだにゃ
そう、歴史的には、日本人はよくお金を使ってきたのです。この「消費マインド」に変化が訪れたのは、1989年のバブル崩壊と、それから続く「失われた20年」の経験からでした。
バブル崩壊と、失われた20年に起きたこと
日本経済を徹底的に破壊した「バブル崩壊」と、その後の長い不景気「失われた20年」。日本人の「消費マインド」を変えてしまったこの出来事は、以下のようなことが起きていました。
バブルの発生
戦後の高度成長期も終わり、日本は世界第2位の経済大国となり、安定成長の時代を迎えていました。そこに「バブル」という空前の好景気が、以下のような理由でやってきます。
①ちょっと不景気だったので、日本銀行が世の中にたくさんお金を供給していた
※日本銀行がお金を供給する仕組みは ~キホンのギモン解説集⑤~で解説します
②たくさんあるお金で、個人も企業も、こぞって不動産や株を買いあさった
③買いたい人が多いので、「高くても売れるだろう」と、不動産価格や株価がどんどん上昇、泡(バブル)のように膨れ上がる
④銀行は、高額になった不動産などを担保に、どんどんお金を貸してくれる
※「不動産を担保」とは・・・お金が返せなくなったら、持ってる不動産代わりに没収するね、という約束のこと
バブルの崩壊
世の中にはお金がじゃぶじゃぶあふれ出ました。
おったまげー
しかし、景気がいいと物価が上がりすぎて、貧しい人はモノが買えずにこまってしまいます。そこで、政府や日本銀行は行き過ぎを抑えようとしました。が。。。
⑤さすがに不動産価格が上がりすぎだと思い、政府や日銀が急激に規制をかけた
⑥「損する前に早く売らなきゃ」と、不動産や株が大量に売られる。
買い手がつかなくなったために、安くしても安くしても売れず、株や不動産の価格が一気に下落 →バブル崩壊
失われた20年
政府と日銀の、ちょっとした政策の誤りによって、バブルは崩壊してしまったのです。
さらにここから、地獄のような「失われた20年」がはじまります。
⑦持っていた不動産価格が下がって、企業は大赤字
⑧赤字になった企業は、銀行から借りたお金が返せない
⑨すると銀行も大赤字、倒産する銀行もあった
⑩銀行は、企業にお金を貸してくれなくなる。もしくは、貸してくれるはずの銀行は倒産。
お金を借りれない企業は、さらに大赤字
⑪企業倒産。倒産しなくてもリストラの実行。大卒でも仕事がない「就職氷河期 」がやってくる
⑫給料は下がり、雇用も減る
⑬仕事もお金もなければ 、モノを買うこともできない
⑭モノが売れないので 、ますます企業は大赤字&倒産
さらにタイミングが悪いことに、3%だった消費税が5%に増税されました。不景気真っただ中なのに、さらにモノの値段が上がったことで「モノを買おう」という気持ちは薄れてしまいます。
同時に、年金のために支払う保険料も増えました。第1回で解説した通り、老人に対して働く世代が少なくなってしまったので、年金制度を維持するために、払う額が上がったのです。
失われたのは「気持ち」
こうして、給料が上がらないどころか、仕事にもありつけない。その上、消費税や保険料などの支払うものは増え、年老いてからはお金ももらえない、そんな絶望感が日本中に満ちあふれました。
こうなっては、「モノを買おう」などという気にはならないし、将来のためにお金は貯めておこう、と思うのは当然のことでした。
バブル崩壊後の失われた20年によって、日本人は「モノを買わないマインド」になってしまったのです。
アベノミクスが成功し、好景気になったといわれますが、なかなか給料が上がらず、実感がなかったりします。この原因は、いまだに「消費マインド」が低下したままだからです。私たちはまだ「失われた20年」に起きたことを覚えているので、手元にお金を残しておきたいと考えてしまうのです。
企業もまた「お金を蓄えておきたいから、給料はまだ上げないでおこう」と考え、私たち個人は「どうなるか不安だから、お金を使わないようにしよう」と考えるのです。こうして、個人も企業もなかなかお金を使わない状態(=不景気)になってしまうのです。
逆に言えば、「未来は明るい」「景気はよくなるだろう」と、みんなが思うことで、お金が使われるようになり、景気が良くなることもあるのです。嘘みたいな話ですが、雰囲気に左右される「気持ち」次第で、経済は発展も衰退もするのです。
次回
次回は、なぜ日本が成長できなくなってしまったのか、墜ちる日本と、成長する中国を比較しながら、ドルーロにゃんが考えます。
この国の衰退を食い止めたい、ニッポンを復活させたい、経済って何なのかゼロから知りたい、と、ドルーロにゃんが政治経済を学んでいるブログです。
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